2013.05.14 Tuesday
聖なるもの・賤なるもの@風の谷のナウシカ
ジブリアニメ「風の谷のナウシカ」と
日本の神話の共通点は、
トリックスターが登場するということ以外にも、まだ、ある。
聖なるものと賤なるものとが同居していることも、また共通点。
聖と賤とのは、相反するもの。
それが同じ世界に隣り合っているということは
こう考えるとわかりやすい。
聖から一本線を引いて、その反対側に賤。
スタート地点が聖なら、終点が賤。
こう考えてはいけない。
聖から出ていくのは、聖に戻るかのような円。
しかし、聖に戻るのではない。
ぐるっとひと回りして、
その行きつく先は、賤。
こう考えると、聖と賤とは隣り合っている!
たとえば、アマという言葉。
これは天津神(アマツカミ)、天照大神(アマテラスオミカミ)のように
天界を表す。
聖である。
一方、海をもアマで示すことがある。
海人(アマ)という表現もある。
海は、果てしなく広く、深く、
古代人にとってもっとも恐ろしい異界、つまりで賎あった。
「アマ」というひとつの言葉に、2つの相反する意味があるのだ。
あるいは、スサノヲに切り殺されたオオゲツヒメ。
この女神さまは食物の神様であり、
鼻、口、尻から次々とご馳走を取り出す。
それが汚らわしいからと、スサノヲは殺してしまったのだけれど、
殺されたオオゲツヒメの体からは
蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆がなった。
汚らわしいものから、人間が生きるに必要な食べ物があらわれる。
まさに賎と聖の同居である。
あるいはまた、話はずっとさかのぼって
イザナキ・イザナミの物語。
イザナミの死因は、カグツチノカミという火の神様を産んだこと。
やけどを負って死に至るのだけれど、
死の直前にたくさんの神様を産む。
吐寫物、糞、尿から神様が誕生したのだ。
賎なるものから聖なるものの誕生!
さて、このように聖なるものと賎なるものとの同居が
日本神話の特徴なのだけれど、
「風の谷のナウシカ」に登場する王蟲(オーム)は
この聖と賎とを内包していると言えるだろう。
王蟲は、胞子を撒き散らして街を破壊する。
しかし、死に瀕したナウシカを、
その触手で彼女を抱き、介抱すると
ナウシカは蘇る、再生する。
王蟲には賎と聖が同居しているのだ。
さらには、腐海(ふかい)と呼ばれる猛毒の瘴気に満ちた樹海。
人を死に至らしめる腐海だが、
その最下層部は、腐海の樹木によって大地の毒が浄化され、
清浄な空気が流れている。
賎である腐海、しかし浄化という聖を行う腐海。
このように、ナウシカの世界にもまた
日本神話と同じ構造が隠れている。
*太田善之・大東文化大学非常勤講師
「宮崎アニメから見る日本神話」講義より
日本の神話の共通点は、
トリックスターが登場するということ以外にも、まだ、ある。
聖なるものと賤なるものとが同居していることも、また共通点。
聖と賤とのは、相反するもの。
それが同じ世界に隣り合っているということは
こう考えるとわかりやすい。
聖から一本線を引いて、その反対側に賤。
スタート地点が聖なら、終点が賤。
こう考えてはいけない。
聖から出ていくのは、聖に戻るかのような円。
しかし、聖に戻るのではない。
ぐるっとひと回りして、
その行きつく先は、賤。
こう考えると、聖と賤とは隣り合っている!
たとえば、アマという言葉。
これは天津神(アマツカミ)、天照大神(アマテラスオミカミ)のように
天界を表す。
聖である。
一方、海をもアマで示すことがある。
海人(アマ)という表現もある。
海は、果てしなく広く、深く、
古代人にとってもっとも恐ろしい異界、つまりで賎あった。
「アマ」というひとつの言葉に、2つの相反する意味があるのだ。
あるいは、スサノヲに切り殺されたオオゲツヒメ。
この女神さまは食物の神様であり、
鼻、口、尻から次々とご馳走を取り出す。
それが汚らわしいからと、スサノヲは殺してしまったのだけれど、
殺されたオオゲツヒメの体からは
蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆がなった。
汚らわしいものから、人間が生きるに必要な食べ物があらわれる。
まさに賎と聖の同居である。
あるいはまた、話はずっとさかのぼって
イザナキ・イザナミの物語。
イザナミの死因は、カグツチノカミという火の神様を産んだこと。
やけどを負って死に至るのだけれど、
死の直前にたくさんの神様を産む。
吐寫物、糞、尿から神様が誕生したのだ。
賎なるものから聖なるものの誕生!
さて、このように聖なるものと賎なるものとの同居が
日本神話の特徴なのだけれど、
「風の谷のナウシカ」に登場する王蟲(オーム)は
この聖と賎とを内包していると言えるだろう。
王蟲は、胞子を撒き散らして街を破壊する。
しかし、死に瀕したナウシカを、
その触手で彼女を抱き、介抱すると
ナウシカは蘇る、再生する。
王蟲には賎と聖が同居しているのだ。
さらには、腐海(ふかい)と呼ばれる猛毒の瘴気に満ちた樹海。
人を死に至らしめる腐海だが、
その最下層部は、腐海の樹木によって大地の毒が浄化され、
清浄な空気が流れている。
賎である腐海、しかし浄化という聖を行う腐海。
このように、ナウシカの世界にもまた
日本神話と同じ構造が隠れている。
*太田善之・大東文化大学非常勤講師
「宮崎アニメから見る日本神話」講義より